金の輪(一の一)
太郎は長いあいだ、病気でふしていましたが、ようやく床からはなれて出られるようになりました。 けれどまだ三月の末で、朝と晩には寒いことがありました。
だから、日のあたっているときには、外へ出てもさしつかえなかったけれど、晩がたになると早く家へはいるように、おかあさんからいいきかされていました。
まだ、さくらの花も、ももの花も咲くには早うございましたけれど、うめだけが、かきねのきわに咲いていました。 そして、雪もたいてい消えてしまって、ただ大きな寺のうらや、畑のすみのところなどに、いくぶんか消えずにのこっているくらいのものでありました。
太郎は、外に出ましたけれど、往来にはちょうど、だれも友だちが遊んでいませんでした。 みんな天気がよいので、遠くの方まで遊びに行ったものとみえます。 もし、この近所であったら、自分も行ってみようと思って、耳をすましてみましたけれど、それらしい声などはきこえなかったのであります。
