金曜の食事会
(水曜の夕方。舞は保育園に向かう電車を待ちながら、同じ課の拓真に電話をかけた。)
拓真:はい、拓真です。
舞:あ、お疲れさまです。舞です。今、少しお話ししてもいいですか。
拓真:大丈夫ですよ。どうしました。
舞:すみません、金曜の食事会のことなんですけど……実は、行けなくなってしまって。
拓真:あ、そうなんですね。
舞:本当にすみません。人数、もうお店に伝えていただいてますよね。
拓真:まだ大丈夫です。明日の昼までなら変えられるので。
舞:よかった。じゃあ、一人減らしてもらってもいいですか。
拓真:はい、こちらでやっておきます。
舞:……あの、金曜は保育園のお迎えが六時半までで、どうしても間に合わなくて。夫が出張なので、今週は私が行かなければならないんです。
拓真:ああ、なるほど。
舞:一次会だけでもと思ったんですけど、六時半に迎えに行ってから戻ると、たぶん八時を過ぎてしまうので。
拓真:それは無理ですよ。
舞:……すみません。せっかく誘っていただいたのに。
拓真:いや、謝らないでください。むしろ、早めに言ってもらえて助かりました。当日に一人減るほうが困るので。
舞:そう言っていただけると、ほっとします。
拓真:正直に言うと、僕も今回は一次会で帰るつもりなんです。
舞:え、そうなんですか。
拓真:うちの下の子、九時には寝ちゃうので。顔だけでも見たくて。
(舞は電話の前で少し笑った。)
舞:なんだ。私だけかと思ってました。
拓真:みんな何かありますよ。言わないだけで。
舞:じゃあ、また今度ぜひ。お昼の会があったら、誘ってください。
拓真:いいですね。来週、駅前に新しくできた店にでも行きましょう。
舞:はい。金曜、楽しんできてください。
拓真:ありがとうございます。お迎え、気をつけて。
