公園の空き缶
町内会の掲示板に、清掃ボランティアの募集の紙が貼ってあった。 「今週の日曜日、朝八時から公園の掃除をします」と書いてある。 参加は自由らしい。 私はこの町に引っ越してから三年になるが、こういう活動に参加したことは一度もなかった。 近所の人とも、道であいさつをする程度で、ほとんど話したことがない。
正直に言うと、掃除そのものに興味があったわけではない。 ただ、最近このあたりのゴミについて、少し気になっていたのだ。 特に、公園のベンチの周りに空き缶が多い。 小さい子どもがよく遊ぶ場所なので、あの状態に対して、何もしないのは良くない気がした。 子どもが安全に遊べるように、誰かが片付けたほうがいい。 それで、思い切って参加してみることにした。
当日、少し早めに公園に行くと、山口さんという年配の女性が名簿を持って立っていた。 町内会の役員を長くしているそうだ。
「初めての方ですか」と山口さんが聞いた。
「はい。三年前にこの近くに越してきた、さとみと言います」
「まあ、来てくれて嬉しいわ。じゃあ、ここに名前を書いておいてくださいね」
私は名簿に名前を書いた。 参加者は全部で十人ほどで、ほとんどが顔なじみらしく、楽しそうに話していた。 山口さんが今回の作業の内容について、丁寧に説明してくれた。 ゴミの分け方や、掃除の方法、道具の使い方など、思っていたより細かい決まりがあって少し驚いた。 燃えるゴミと燃えないゴミをきちんと分けるために、袋の色まで決まっているのだ。
作業が始まると、みんな慣れた様子で手を動かしていた。 私も見よう見まねで、ベンチの下の空き缶を拾った。 近くにいた人が「そこ、まだ落ちてますよ」と教えてくれる。 一時間ほどで、公園はすっかりきれいになった。
終わってから、山口さんが温かいお茶を配ってくれた。
「さとみさん、また来てくれると助かるわ。若い人が少なくてね」
「はい、ぜひ。こういう活動があること自体、知りませんでした」
「これからは、無理のない範囲でね」
正直、来る前は少し面倒だと思っていた。 でも、現在の気持ちは、来る前とは全く違う。 自分の住む町が、少しだけ自分のものになったような、そんな感じがした。 ゴミについて考えることが、こんなに気持ちのいいことだとは思わなかった。 次回も、予定を空けておこうと思う。
