蟹のしょうばい(三)
ところが、蟹というものは、あまり大きなものではありません。 蟹とくらべたら、たぬきはとんでもなく大きなものであります。 その上たぬきというものは、からだじゅうが毛むくじゃらであります。 ですから仕事はなかなかはかどりません。 蟹は口から泡をふいていっしょうけんめいはさみをつかいました。 そして三日かかって、やっとのこと仕事はおわりました。
「じゃ、やくそくだから、わたしのお父さんの毛もかってくれたまえ。」
「お父さんというのは、どのくらい大きなかたですか。」
「あの山くらいあるかね。」
蟹はめんくらいました。 そんなに大きくては、とてもじぶんひとりでは、まにあわぬと思いました。
そこで蟹は、じぶんの子どもたちをみなとこやにしました。 子どもばかりか、まごもひこも、うまれてくる蟹はみなとこやにしました。
それでわたくしたちが道ばたにみうける、ほんに小さな蟹でさえも、ちゃんとはさみをもっています。
