湯島のお守り
一月のはじめ、祖母が朝ごはんの席で、孫の湯のみの横に小さな袋を置いた。 紺色の布に、金色の糸で「合格祈願」と縫ってある。
「湯島まで行ってきた。日曜だったから、一時間並んだよ」
お守りは、神社や寺で受けるものだ。 買うとは言わない。 中には紙や木の札が入っているが、開けて見るものではない。 学問の神様として知られる天神様は、平安時代の学者、菅原道真をまつっている。 東京の湯島天神、福岡の太宰府天満宮、京都の北野天満宮には、受験の季節になると、朝から長い行列ができる。
受ける人は、受験生本人とはかぎらない。 むしろ、保護者や祖父母が代わりに並ぶことが多い。 試験そのものは手伝えないので、この小さな袋が、何かしてやりたいという気持ちの置き場所になる。
渡されたお守りは、かばんや筆箱など、毎日持ち歩くものに入れる。 そして、結果がどうであっても、一年たったら神社に返す。 「古札納め所」という箱が置いてあって、そこに納めればいい。 新しい年には、また新しいお守りを受ける。
三月、孫の受験が終わった。 二人で湯島に行き、箱の前で、孫は二か月持ち歩いた袋を納めた。 祖母はその横で手を合わせてから、社務所へ寄って、もう一つお守りを受けた。 交通安全の、自分の分だった。
