今夜も残業
けんたは、駅前のコンビニで週に三回、夜のアルバイトをしている。 今日は夜十時に上がる予定だった。 恋人と映画を見る約束があって、朝からずっと楽しみにしていたのだ。
十時が近づいたころ、店長がバックヤードから出てきた。 困ったような顔をしている。
「けんた君、悪いんだけど」と店長が言った。 「今夜、次のシフトの子が急に休みでね。もう少し残ってもらえないかな」
けんたは、心の中でため息をついた。 先週も同じ理由で残業させられたばかりだった。 あのときも、断りきれずに深夜まで働かされた。 今日は約束があると言おうとしたが、店長の困った顔を見ると、なかなか言い出せない。
「あの……実は今日、用事が」
「そうか。でも、君しか頼める人がいなくてね」
結局、けんたは今夜も残業させられることになった。 恋人に「ごめん、また仕事」とメッセージを送る。 画面の向こうの返事は、少し冷たかった。
レジに立ちながら、けんたは思った。 こうやって、いつも都合よく働かされてしまう。 仕方がないと言えば、仕方がない。 でも、次に頼まれたときは、ちゃんと断ろう。 店長のためではなく、自分のために。 そう心に決めて、けんたは次の客の会計を始めた。
