鬼六(三の一)
逃げ出したものの、どうする当てもないので、今にも鬼が追っかけて来るかとはらはらしながら、川の岸をはなれて山の方へどんどん逃げて行きました。
逃げ出して、山の中をあてもなくうろうろ歩いていますと、どこか遠くの林の中から、子供の歌う声がしました。 やがてその声はだんだん近くなって、つい聞くともなしに、耳にはいってきたのは、こういう歌でした。
鬼六どうした、 橋かけた。 かけたらほうびに、 目玉、早もって来い。
この歌を聞いて、大工はほっとしました。 そうして生き返ったように、元気をとりもどして、宿屋に帰って寝ました。
その明くる日、大工がまた川へ出ると、鬼はさっそく出て来て、
「さあ、すぐ、目玉をよこせ。」
といいました。
「まあしばらくお待ちください。どうもこの目をとられては、あしたから大工の商売ができません。かわいそうだとおぼしめして、何かほかのお礼でごかんべん願います。」
