一寸法師(二の二)
と、一寸法師は往来の人の下駄の歯をよけて歩きながら、しきりに感心していました。
三条まで来ると、たくさんりっぱなお屋敷が立ち並んだ中に、いちばん目にたってりっぱな門構えのお屋敷がありました。
一寸法師は、「なんでも出世をするには、まずだれかえらい人の家来になって、それからだんだんにし上げなければならない。これこそいちばんえらい人のお屋敷に違いない。」と思って、のこのこ門の中に入っていきました。
広い砂利道をさんざん歩いて、大きな玄関の前に立ちました。 なるほどここは三条の宰相殿といって、羽ぶりのいい大臣のお屋敷でした。
そのとき一寸法師は、ありったけの大きな声で、「ごめん下さい。」とどなりました。 でも聞こえないとみえて、だれも出てくるものがないので、こんどはいっそう大きな声を出して、「ごめん下さい。」とどなりました。
三度めに一寸法師が、「ごめん下さい。」とどなった時、ちょうどどこかへおでましになるつもりで、玄関までおいでになった宰相殿が、その声を聞きつけて、出てごらんになりました。 しかしだれも玄関には居ませんでした。 ふしぎに思ってそこらをお見回しになりますと、靴ぬぎにそろえてある足駄の陰に、豆粒のような男が一人、反り身になってつっ立っていました。
宰相殿はびっくりして、「お前か、今呼んだのは。」
「はい、わたくしでございます。」
「お前は何者だ。」
「難波からまいりました一寸法師でございます。」
「なるほど一寸法師に違いない。それでわたしの屋敷に来たのは何の用だ。」
「わたくしは出世がしたいと思って、京都へわざわざ上ってまいりました。どうぞ一生懸命働きますから、お屋敷でお使いなさって下さいまし。」
一寸法師はこういって、ぴょこんとおじぎをしました。 宰相殿は笑いながら、「おもしろい小僧だ。よしよし使ってやろう。」とおっしゃって、そのままお屋敷に置いておやりになりました。
