桃太郎(四の二)
鬼の大将は、桃太郎の大力で首をしめられて、もう苦しくってたまりませんから、大つぶの涙をぼろぼろこぼしながら、
「降参します、降参します。命だけはお助け下さい。その代わりに宝物をのこらずさし上げます。」
こう言って、ゆるしてもらいました。
鬼の大将は約束のとおり、お城から、かくれみのに、かくれ笠、うちでの小づちに如意宝珠、そのほかさんごだの、たいまいだの、るりだの、世界でいちばん貴い宝物を山のように車に積んで出しました。
桃太郎はたくさんの宝物をのこらず積んで、三にんの家来といっしょに、また船に乗りました。帰りは行きよりもまた一そう船の走るのが速くって、間もなく日本の国に着きました。
船が陸に着きますと、宝物をいっぱい積んだ車を、犬が先に立って引き出しました。きじが綱を引いて、猿があとを押しました。
「えんやらさ、えんやらさ。」
三にんは重そうに、かけ声をかけかけ進んでいきました。
うちではおじいさんと、おばあさんが、かわるがわる、
「もう桃太郎が帰りそうなものだが。」
と言い言い、首をのばして待っていました。そこへ桃太郎が三にんのりっぱな家来に、ぶんどりの宝物を引かせて、さもとくいらしい様子をして帰って来ましたので、おじいさんもおばあさんも、目も鼻もなくして喜びました。
「えらいぞ、えらいぞ、それこそ日本一だ。」
とおじいさんは言いました。
「まあ、まあ、けががなくって、何よりさ。」
とおばあさんは言いました。
桃太郎は、その時犬と猿ときじの方を向いてこう言いました。
「どうだ。鬼せいばつはおもしろかったなあ。」
犬はワン、ワンとうれしそうにほえながら、前足で立ちました。
猿はキャッ、キャッと笑いながら、白い歯をむき出しました。
きじはケン、ケンと鳴きながら、くるくると宙返りをしました。
空は青々と晴れ上がって、お庭には桜の花が咲き乱れていました。
