毎日、と書いた
この歯医者には、めったに来ない。 痛くなってから来るので、いつも久しぶりになる。
椅子に座る前に、毎回同じ紙を渡される。 質問も同じだ。 一日に何回歯を磨くか。 フロスは、週に何回使うか。
磨くほうには「二回」と書いた。 これは本当だ。 フロスのほうは、少し考えてから「毎日」と書いた。 こちらは、かなりオーバーだった。
「三宅さん、こちらへどうぞ」
衛生士の小田さんは、私の紙を見て、それから私の口の中を見た。 上のライトが白い。 細い道具が、歯を一本ずつ回っていく。
「奥の、この辺です」と小田さんが言った。 「ここだけ、フロスが通っていませんね」
私は口を開けたまま、うなずいた。
道具が止まった。
「毎日、使っていますか」
「……たまに、です」
「たまに、というのは、月に何回ぐらいですか」
「先月は、一回でした」
小田さんは、私の紙の「毎日」を線で消した。 そして、その横に「たまに」と書いた。
「正直なほうが、こちらは助かります」と小田さんは言った。 「次は、この紙を書き直しに来てください」
