泥だらけ
夕方、そうたが公園から帰ってきた。 玄関のドアを開けた瞬間、母のミナは大きな声を出した。
「そうた……あなた、泥だらけじゃない」
そうたの服も、顔も、手も、全部茶色かった。 まるで、泥の中で寝てきたみたいだった。 くつの中まで、どろどろだ。
「だって、みんなで穴を掘ってたんだ」と、そうたはにこにこしながら言った。 「大きな宝物を探してたんだよ」
「公園で? どうして穴なんか掘るの」
「山田くんが、昔ここに宝物を埋めた人がいるって言うから。だから、みんなで掘ってみたんだ」
ミナはため息をついた。 せっかく今朝、洗ったばかりの服だった。 それが、もう泥だらけだ。
「それで、宝物は見つかったの?」
「ううん。でも、かわりに、すごいものを捕まえた!」
そうたがポケットに手を入れた。 ミナは、いやな予感がした。
「そうた、まさか……」
「ほら、これ!」
そうたが取り出したのは、小さな緑のカエルだった。 カエルはミナの手の上にぴょんと飛び乗って、そのまま台所のほうへ逃げてしまった。
「ちょっと、待ちなさい!」
ミナはカエルを追いかけながら、思った。 泥だらけの服より、こっちのほうが、ずっと大変だ、と。
