きときとの魚
(富山の市場。魚屋の前に「きときとの魚」と書いた札が立っている。)
あやか:あの、恐れ入りますが、ちょっと教えていただいてもいいですか。
おばあさん:はいはい、何ですか。
あやか:あの札の「きときと」って、どういう意味なんでしょうか。
おばあさん:ああ、あれね。この辺の言葉ですちゃ。新鮮っていう意味やよ。
あやか:新鮮、ですか。
おばあさん:そう。今朝とれた魚。まだぴかぴか光っとるでしょう。ああいうのをきときとって言うがよ。
あやか:じゃあ、野菜にも使うんですか。
おばあさん:使う使う。人にも使うよ。「あの子はきときとしとる」って言うたら、元気な子っていう意味。
あやか:人にも使えるんですね。……あの、もう一つ聞いてもいいですか。
おばあさん:どうぞ。
あやか:「しとる」も方言ですか。
(おばあさんが笑う。)
おばあさん:あら、そうやね。「している」のことやわ。自分では気がつかんかった。
あやか:やっぱり。すみません、旅行で来たので、全部が新しくて。
おばあさん:ええがよ。あんた、覚えるの早いわ。
あやか:ありがとうございます。じゃあ、標準語で言うと「新鮮な魚」ですね。
おばあさん:まあ、そうやけどね。「新鮮」は、ただ新しいだけやろ。きときとは、まだ動いとるみたいな感じながよ。
あやか:……この魚、まだ動いてるんですか。
おばあさん:そう見えるくらい、いいってこと。
