百五十二
放課後の新聞部の部屋には、みずきとゆづきの二人しかいなかった。 机の上に、ノートと、少しへこんだスケートボードが置いてある。
「じゃあ、始めるね。いつから乗ってるの?」とみずきが聞いた。
「四月から。お兄ちゃんが使わなくなったのをもらったの」とゆづきが答えた。
みずきはノートに書いた。 ゆづきが学校の前の坂で毎朝練習していることは、部の中で有名だ。
「怖くない?」
「最初は怖かったよ。今も少し怖い」とゆづきは笑った。 「でも、転んだ回数を数えるのが楽しくなってきて」
「数えてるの?」
「うん。今日で百五十二回」
みずきはペンを止めた。
「じゃあ、いちばんうれしかったのは?」
「百五十二回目に転んだ日」とゆづきは言った。 「その日、初めて坂の下まで下りられたの」
みずきはノートに大きく百五十二と書いて、丸で囲んだ。 「これ、見出しにするね」
「えっ、転んだ数を?」とゆづきが言った。
「うん。百五十二回転んだ人の話のほうが、みんな読むよ」
